第22章 遭遇<参>
「禰豆子!」
二人が慌てて戻ると、禰豆子は屋台の前で横になりながら寝息を立てていた。二人はほっとして禰豆子を起こさないように隣に座る。
先ほどの騒ぎが嘘のように、あたりは静寂に包まれていた。
「・・・ごめん、炭治郎」
座ってしばらくした後、汐が突然謝罪の言葉を口にした。炭治郎は怪訝そうな顔で汐を見ると、彼女は目をぎゅっと固くつぶったまま答えた。
「あたし、鬼舞辻を見たのに動けなかった。あんなおぞましい眼をした奴は初めてで、体が全く動かなかった。声も出なかった。あの時あたしが動けていれば、奴を捕まえられたかもしれないのに・・・ごめん」
汐の拳が震える。恐ろしさと悔しさが入交った匂いが炭治郎の鼻に届く。そんな彼女に、炭治郎は首を横に振った。
「いや、俺のほうこそ軽率だった。俺が勝手な行動をしなければあんなことは起こらずに済んだかもしれない。それに、汐に怖い思いまでさせてしまった。俺のほうこそごめん」
炭治郎はそう言って汐に頭を下げる。汐も混乱して炭治郎に頭を下げる。二人して頭を下げる不思議な光景だった。
「な、なんか、あたしたち謝ってばかりだね」
「そ、そうだな」
なんとなく気まずい雰囲気になってきた頃、禰豆子が小さくうめいて目を開ける。そして目の前の不思議な光景を見て首を傾げた。
「あ、禰豆子。おはよう。って、夜におはようっていうのも変か。一人にさせちゃってごめんね」
汐がそう言うと、禰豆子はきょとんとして二人を見つめる。そんな時だった。
「お前らあああ!!」
いきなりの大声に三人はびくりと体を震わせる。
振り返ると、そこには先程のうどん屋の店主が額に青筋を立てて汐達を睨みつけていた。