第150章 真実(前編)<参>
「あ、そうだ!その沙代って子、まだ元気なのよね?」
「ああ。そう聞いているが・・・」
「だったら、ひと段落着いたら会いに行ってみたら?」
汐の提案に、悲鳴嶼は驚きのあまり息をのんだ。
「もう分別の付く年だろうし、もしかしたらその事を悔いているかもしれない。謝りたいと思ってるかもしれない。悲鳴嶼さんだって、本当は沙代がそんな子じゃないって分かってるんでしょ?」
汐の迷いない声は、霧を晴らす光のように悲鳴嶼の心を斬り裂いていく。
「だが・・・」
「自信がないっていうなら、あたしも一緒についていくわよ。まあ、余計なお世話かもしれないけれどね・・・」
汐の言葉を、悲鳴嶼は黙って聞いていた。まだ齢十六の、自分の半分ほどしか生きていない少女の言葉は、どんな言葉よりも悲鳴嶼の心の霧を晴らしていった。
(大海原汐。この子は、いや、この人は・・・)
悲鳴嶼は目の前の少女から、途轍もない何かを感じた。まるで、肉体と魂の年齢に大きな差があるように。
「君は、一体・・・」
悲鳴嶼がそこまで言いかけた時、汐の足元がぐらりと傾いた。