第150章 真実(前編)<参>
「さっきの話なんだけど。さっきの沙代って子の話。あたしの憶測でしかないから大したことは言えないんだけどさ・・・」
汐は迷ったように視線を動かすと、意を決して言い放つ。
「その子、あんたの事を売ったりしたんじゃないと思うわよ。化け物って言ったのは、あんたの事じゃないと思う」
悲鳴嶼は黙ったまま、汐をじっと見据えていた。
「勿論、あたしはまた聞きだから詳しいことはわかんないし、その沙代って子がどんな子か分からないから何とも言えないけど、少なくともあんたの事を恨んでいるとか、陥れるとか、そう言うのはないと思う」
そうよ!と、汐は思い出したように立ち上がった。
「元凶は藤の花の香炉を消したクソガキじゃない!悲鳴嶼さんはなーんも悪くないし、人間として守るべき人を守るために戦っただけよ。あの人みたいに、煉獄さんみたいに・・・」
汐は目を閉じ、煉獄の姿を思い浮かべた。
「あー、聞けば聞くほど、そのクソガキに腹立つわー!もしも出会えたら、顔の形が変わるまでぶん殴ってやるのに!」
「それはやめなさい。というよりも、女性がそのようなことを言ってはいけない」
苛立ちのあまり暴れそうになる汐を、悲鳴嶼は優しく諫めた。