第150章 真実(前編)<参>
「あー、楽しかった!!ありがとう、悲鳴嶼さん!!」
汐は顔を高揚させながら、満足げにそう言った。
「気に入ってもらえたようで何よりだが、まさか君がこのようなことを頼むとは思わなかった」
悲鳴嶼は、少し困ったように笑いながら言った。
「悲鳴嶼さんを初めて見た時、衝撃が走ったの。この人なら絶対に、あたしでも人間回転木馬できるんじゃないかって」
汐は乱れた息を整えながら、嬉しそうに語った。
「あたしがいた村じゃ、あたしが木馬役をやってて、されることは滅多になかったのよ。おやっさんは夜にしか出てこれないし、頼むとものすごい悪い顔で馬鹿にするから、頼めなかったの」
その事を思い出したのか、汐は頬を膨らませた。
悲鳴嶼には汐の表情は見えないが、ころころと変わる声色であらかた想像はできた。
「だからずーっとあたしは木馬役で我慢してた。でもいつか、いつかおやっさんの病気が治ったら、遊んでもらおうって思ってたのよ。もっとも、病気なんて生易しいものじゃなかったけどね」
汐の声色が切ないものになり、悲鳴嶼はその悲しみを少しだけ感じた。その悲しみが悲鳴嶼の目から涙となって流れ落ちた。
「あ、あのさ。悲鳴嶼さん」
「なんだ?」
悲鳴嶼が答えると、汐は言葉を切った後口を開いた。