第150章 真実(前編)<参>
(この声は、汐!?炭治郎と次の訓練に行ったんじゃなかったのか!?)
玄弥はすぐさま悲鳴が聞こえた方向へと走り出した。
「すご・・い・・・!こんな・・・初めて・・・」
風に乗って汐の声が途切れ途切れに聞こえてきて、玄弥は何故か焦りだした。
そしてひときわ大きな木の陰から覗いた、その瞬間。
「きゃはははははは!!!」
汐の軽快な笑い声と共に、風を切る音か聞こえた。
そこで玄弥が見たものは――
「すごいすごーい!!悲鳴嶼さん力持ち―!!」
汐を左腕にぶら下げたまま、ぐるぐると大きく回る悲鳴嶼がそこにいた。
(えーーーーー!?)
玄弥は口をあんぐりと開けたまま、その光景を凝視していた。
汐は左腕にしがみ付きながら、けらけらと楽しそうに笑っていた。
(な、何だか見ちゃいけねえものを見ちまった気がする・・・)
いろいろと理解は追いつかないが、とにかくここに居てはいけない気がして、玄弥はすぐさま踵を返した。
(でも、でも。あいつ。汐・・・)
玄弥は走りながら、先ほどの汐の顔を思い出していた。
(あいつ、あんな顔もするんだな・・・)
そう考えた瞬間、玄弥の顔が茹蛸の如く真っ赤になった。その一瞬の気のゆるみが、玄弥の足元にあった石への注意を妨げた。
玄弥は石に見事に躓き、顔面から思い切り転んでしまうのだった。