第150章 真実(前編)<参>
善逸の事を気にしつつ、汐は悲鳴嶼の屋敷へと向かっていた。
屋敷が近づくにつれ、汐の胸が段々と高鳴っていく。
そして、屋敷についた汐を待っていたのは
「来たか」
羽織をひるがえし、腕を組みながら仁王立ちしている悲鳴嶼だった。
「もういいのか?」
「うん。やるべきことはやった。悔いはないわ」
汐ははっきりとした声でそう言い、悲鳴嶼を見上げた。
「来なさい」
悲鳴嶼はそういうと、屋敷から少し離れた開けた所に汐を案内した。
「さて、準備はいいか?」
悲鳴嶼はそういうと着ていた羽織をそっと脱ぎ、改めて汐に向かい合った。
筋肉隆々の逞しい体つきに、汐は眩暈に似た感覚を感じつつも、悲鳴嶼に向かって足を進めた。
一方その頃。
岩の訓練を再開していた玄弥は、先ほどの炭治郎と汐の言葉を思い出していた。
(兄貴は、本当に俺の事・・・)
二人を信じられないわけでは決してない。だが、玄弥の脳裏には、自分に躊躇いもなく危害を加えようとしてきた姿も浮かぶ。
(俺は一体、どうすればいいんだ・・・)
玄弥は集中ができず、岩から手を放して寄りかかった。
その時だった。
「きゃあああああ!!!」
何処からか甲高い悲鳴が聞こえ、玄弥は飛び上がった。