第150章 真実(前編)<参>
「あ、あの、善逸。あんたに何かあったかは聞かないけど、でもせめて、その頭の止血だけはさせて」
汐は震える手を抑えながらそう言った。
「ありがとう、汐ちゃん。でも、大丈夫だよ。君は君のやるべきことをやるんだ」
善逸は木にかけてあった手ぬぐいで乱暴に血を拭きながら、はっきりした声で言った。
「俺はやるべきこと、やらなくちゃいけないことがはっきりした。これは絶対に、俺がやらなきゃ駄目なんだ」
そう言う善逸の声からは、決意と微かな怒りを感じた。汐は身体を震わせ、唾を飲み込んだ。
「そう。わかったわ。でも、無理だけはしないで。あたしはともかく、炭治郎が心配するから」
汐はそう言って善逸に背を向け、一度振り返るとその場を立ち去った。
「ありがとう、汐ちゃん。君は強くて優しい女の子だね」
善逸は呟くように言うと、岩に手を押し当てた。体中に駆け巡る、決意と怒りを感じながら――。