第150章 真実(前編)<参>
(悲鳴嶼さんのところに行く前に、善逸の様子を見に行こう。炭治郎も見に行っているだろうけど、念のためにね)
汐は善逸がいるであろう場所に静かに足を進めた。すると、岩の傍に静かに立つ善逸の姿が見えた。
だが、その顔の下からは、血の雫が滴っていた。
「ちょっと、あんた!何よその傷・・・」
汐は慌てて善逸の腕を引き、顔を見てぎょっとした。
善逸の"目"が、いつものそれと全く違っていたからだ。
「あんた・・・、その"目"・・・」
汐が声を震わせると、善逸は目を閉じて汐に背を向けた。
「驚かせて、ごめん」
善逸の口から、静かな声が漏れた。そのただならぬ雰囲気に、汐は善逸に何かがあったことを察した。
「何か、あったのね」
汐が尋ねると、善逸は口を閉じたまま何も言わない。だが、その沈黙が肯定を示す何よりの証拠だった。
何があったかを聞こうとして、汐は口を閉じた。先ほどの善逸の"目"が、それを望んでいなかったからだ。
「汐ちゃんは訓練を終えたんだよな」
善逸は振り返らないまま、そう言った。汐が頷くと、善逸は「そうか、おめでとう。頑張って」と静かに言った。