第150章 真実(前編)<参>
昼餉が終わり、伊之助と玄弥はそれぞれの場所へ戻っていった。
炭治郎は汐に義勇の下へ行くかと尋ねたが、汐は悲鳴嶼との用事があるからと断った。
「そうか・・・」
炭治郎は残念そうに眉根を下げたが、汐からは例の甘い匂いはしなかった。
それを感知した時、何故かほっとした気持ちになった。
「そう言えば、さっきは気づかなかったけど、善逸はどうしたの?」
食べ終わった食器を片付けながら、汐は唐突に言った。
「何だか妙に静かだとは思ってたけど、善逸の奴、食べに来なかったわね」
「ああ。ここのところ最近、善逸の様子がおかしいんだよ。あまりしゃべらないし、食事もあまりとらないし、心配だな・・・」
「そうね。あの騒音の塊のあいつが静かだなんて、気持ち悪いわ」
汐の言葉には棘があるものの、善逸を心配しているのは明らかだった。
「俺様子を見てから義勇さんの所に行くよ」
「分かったわ。じゃあ後でね」
炭治郎は一足先に休憩所を出て、汐は片付けを終わらせた後同じくそこを出た。
(善逸、どうしたのかしら)
普段はうっとおしいと思いつつも、汐は善逸の事は決して嫌いではない。
嘗て自分が記憶をなくした時は、思い出すきっかけを作ってくれた人だった。
それに何より、普段騒いでいる人間が静かだと、落ち着かない。気持ち悪かった。