第150章 真実(前編)<参>
「これ食べたら俺と汐は義勇さんとこ行くけど、玄弥も来るのか?」
「いやいや行けねぇよ。岩を一町も動かせてないし」
「俺はあと少しだぜ!!」
二人の会話を斬り裂く様に、伊之助の声が響いた。
「呼吸使えねぇからな、俺」
玄弥がそう言うと、伊之助は口を開けながら勝ち誇ったように笑った。
「ハハハハ。お前呼吸使えねぇのか、雑魚が!!」
そう言った瞬間、玄弥は奇声をあげて伊之助に飛び掛かった。
伊之助も負けじと玄弥の髪を掴み、取っ組み合いのけんかに発展した。
「こらこらこら、二人とも止めろ!!」
炭治郎は立ち上がり、慌てて二人の仲裁を試みた。
「そんなに騒いだりしたら、汐が・・・!!」
炭治郎はそこまで言いかけて口を閉じた。二人の背後から、冷たい怒りの匂いが漂ってきたからだ。
「あ・・・」
炭治郎が声を上げる間もなく、休憩所中に重く鈍い音が二回響き渡った。
「・・・で?あんた達は何をうるさく騒いでいたの?」
静かになった休憩所で、汐は残りの干物を炭治郎に分けながら言った。
汐の足元には、拳大のこぶを後頭部につけた玄弥と伊之助が、床に顔面をめり込ませて倒れていた。