第149章 真実(前編)<弐>
「それから私は本当に疑り深くなったように思う。君達のことも勿論疑っていた。普段どれ程善良な人間であっても、土壇場で本性が出る」
「それは、否定できないわね。あたしもそういう人間は嫌というほど見てきたもの」
汐は目を逸らしながら、吐き捨てるように言った。
「しかし君達は逃げず、目を逸らさず、嘘をつかず素直でひたむきだった。簡単な事のようだが、どんな状況でも、そうあれるものは少ない。君達は特別な子供」
「それは・・・」
炭治郎が何かを言いかけたが、悲鳴嶼は、再び涙を溢れさせながら、優しげな声で言った。
「大勢の人間を心の目で見てきた私が言うのだから、これは絶対だ。未来に不安があるのは誰しも同じ。君達が道を間違えぬよう、これからは私も手助けしよう・・・」
悲鳴嶼がかき鳴らす数珠の音が、あたりに響く。
汐は小さく息をつくと、炭治郎に耳打ちをした。
「炭治郎、ここは素直に認められましょ?ここであれこれ言ったら、逆に失礼になりそうな気がするわ」
「ううっ・・・、頑張ります。ありがとうございます」
炭治郎は涙を溢れさせながら、感謝の言葉を口にした。