第149章 真実(前編)<弐>
「生まれて初めて全身の力を込め振るった拳は、自分でも恐ろしい威力だった。鬼に襲われなければ、自分が強いと言うことを知らなかった。私は、夜が明けるまで鬼の頭を殴り潰し続けた」
悲鳴嶼はその夜に山ほどの物を失い、傷つきながらも命を懸けて沙代を守った。
だが、駆け付けた者たちに沙代が言った言葉は、悲鳴嶼をどん底に突き落とすものだった。
『あの人は化け物。みんなあの人が、みんな殺した』
「そんな・・・」
炭治郎は愕然とした表情で言葉を漏らした。
汐に至っては、歯を食いしばりながら、全身を悔しさのあまりに震わせていた。
「恐ろしい目に遭い混乱したのだろう。まだ四の子供だ。無理も無いこと・・・。子供とはそういう生き物だ」
だがそれでも、悲鳴嶼は沙代にだけは労わってほしかった。自分の為に戦ってくれてありがとうと言って欲しかった。
夜が明け、鬼の屍は塵となり消え、子供たちの亡骸だけが残った。
そして悲鳴嶼は、無実でありながらも殺人の罪で投獄された。
処刑を待つ彼を救ったのは、鬼殺隊当主である産屋敷輝哉だった。