第149章 真実(前編)<弐>
「さらには、目も見えぬ大人は何の役にも立たないという、あの子たちなりの判断だろう」
「えっ!?」
(悲鳴嶼さん、目が・・・!?)
二人はそこで初めて、悲鳴嶼が盲目だということを知り、動揺した。
悲鳴嶼の言うことを聞いてくれたのは、一番年下の沙代という少女だけだった。
沙代だけが彼の後ろに隠れ、他の三人の子供たちは、悲鳴嶼を当てにせずに逃げ・・・、暗闇の中で喉を掻き切られて殺された。
「私は、何としても沙代だけは守らねばと思い戦った」
悲鳴嶼の数珠の一つがひびが入り、乾いた音が響く。
悲鳴嶼は鬼に飛び掛かり、拳を振り下ろした。生き物を殴る感触は、今でも鮮明に覚えている。
それは想像を絶するほど、おぞましく気色の悪いものだった。地獄のようだった。一生忘れられない程の。
「・・・」
汐はその話を聞きながら、初めて鬼を斬ったこと。家族だったものを斬ったことを思い出していた。
その手が微かに震えていることに、誰も気づくことなく。