第149章 真実(前編)<弐>
悲鳴嶼はかつて、寺で身寄りのない子供たちを引き取り育てていた。
皆血縁は無かったものの、仲睦まじく、お互いに助け合い、本当の家族のように暮らしていた。
そのようにずっと、暮らしていくつもりだった。これまでも、これからも。
「ところがある夜、言いつけを守らず日が暮れても寺に戻らなかった子供が、鬼と遭遇し、自分が助かる為に、寺にいた私と八人の子供達を鬼に喰わせると言ったのだ」
「・・・!!」
悲鳴嶼の話に炭治郎は息をのみ、汐は怒りに顔を歪ませた。
余程の事だったのだろう。悲鳴嶼の顔には血管が浮き出ていた。
悲鳴嶼の住んでいた地域では、鬼の脅威の伝承が根強く残っており、夜には必ず、鬼が嫌う藤の花の香炉を焚いていた。
だが、その子供が香炉の火を消し鬼を寺に招き入れてしまった。
鬼は襲い掛かり、瞬く間に四人の幼い子の命を奪った。
悲鳴嶼は残った四人を何とか守ろうとしたが、そのうちの三人は彼のいう事を聞かなかった。
その頃の悲鳴嶼は今とは異なり、食べるものも少なくやせ細り、気も弱く大声を出したことがなかった。