第149章 真実(前編)<弐>
「いいえ、違います」
はっきりとした声に、悲鳴嶼は驚いたように目を見開いた。
「決断したのは禰豆子であって、俺ではありません」
炭治郎は悲鳴嶼の目を見据えながら、きっぱりと言い切った。
「俺は決断ができず、危うく里の人が死ぬところでした。認められては困ります」
炭治郎の言葉に、悲鳴嶼は言葉を失った。
「まったくあんたって、呆れるくらい無欲よね」
汐はため息をつきながら、困ったように笑った。
「でも、あたしが炭治郎と同じ立場だったら、同じように決断できなかったかもしれないわ。現にあの時、あたしは咄嗟に動けなかった」
汐は、その事を思い出しながら目を閉じた。
「それにあたしは、炭治郎と違って何もしてないわ。ただ命に優先順位をつけたくなかっただけ。理不尽なことで死んでほしくないのよ」
「汐・・・」
そんな二人を見て、悲鳴嶼は涙を流しながら思った。
(子供というのは純粋無垢で弱く、すぐ嘘をつき、残酷な事を平気でする我欲の塊だ)
悲鳴嶼が今まで生きてきて出会った子供というものは、そういうものだと思わざるを得なかった。
(しかしやはり、この子供達は違う・・・)
悲鳴嶼にとって目の前の二人は、今まで見てきたそれとは異なっていた。