第149章 真実(前編)<弐>
それから数分後。
目を腫らした汐と、顔を腫らして鼻に詰め物をした炭治郎は、お互い少し距離を取りながら悲鳴嶼の前に座っていた。
「落ち着いたか?」
悲鳴嶼が優しく声を掛けると、汐は小さくうなずきながら返事をした。
「ところでなんで悲鳴嶼さんと炭治郎がここにいるの?」
汐が尋ねると、悲鳴嶼は炭治郎が数分前に汐同様訓練を終えたことを告げた。
「その時に君の事を大層気にしていたので、連れてきたのだ」
「そうだったの・・・」
汐は恥ずかしさのあまり、頬を染めながら俯いた。
「それに、私は君達に伝えなければならないことがある」
悲鳴嶼の言葉に、二人は思わず顔を上げた。
「岩の訓練も達成した。それに加えて里での正しき行動。私は、君達を認める・・・」
悲鳴嶼の静かな声が響く。
「君は刀鍛冶の里で、鬼の妹の命より里の人間の命を優先した・・・」
「あ・・・、それは・・・」
悲鳴嶼は炭治郎の方を向いていうと、炭治郎ははっとした表情になった。
「そして君は、どんな状況であっても目の前の命を決して見捨てなかった」
「・・・」
汐は口を閉じたまま、何も言わない。
「恥じることはない、君達は剣士の鑑だ。自分の正しき行動を誇るといい・・・」
しかし炭治郎は首を横に振った。