第148章 真実(前編)<壱>
「あ、あんた・・・、村田さん・・・?」
「そうだよ村田だよ!やっと覚えてくれたか・・・」
村田はほっと胸をなでおろすが、汐の顔を見てぎょっとした。
その顔からは汗が滝のように流れ落ち、目の焦点が定まっていない。
村田は急いで、持っていた水筒を汐に渡した。その瞬間、汐はすぐさま水筒の中の水を、凄まじい速さで飲みだした。
数秒後、水を飲みほした汐は、ゆっくりと岩に背中を預けて息をついた。
「ありがとう、助かったわ」
汐がそういうと、村田も安心したように笑った。
「驚いたよ。様子を見に来たら、お前が今にも死にそうな顔をしてたから」
村田はそう言って、汐が岩を押してきたであろう痕跡を見て目を見開いた。
「お前、岩を押せるようになったのか・・・」
「まあね。でも、まだあと半分くらいあるわ。それに、岩を押せるようになったのは、あたしが最初じゃないわよ」
汐は同期の玄弥から、反復動作の事を聞いたことを話した。
「そのおかげでここまでこられたけど、いつの間にか身体が悲鳴を上げていたのね。あんたが来てくれなかったらどうなっていたか・・・、ありがとね」
「いやいや、岩を押せるだけですげえよ。ましてやお前は女なのに、男顔負けの功績のこしてるじゃねえか」
「それって褒めてる?」
汐が少し顔をしかめて言うと、村田は「当り前だろ」と呆れたように言った。