第148章 真実(前編)<壱>
「けど、だからってあんまり無理すんなよな。お前が倒れたりなんかしたら、あいつらが心配するだろ」
「あいつらって・・・」
「炭治郎とか、猪とか、後黄色い奴だろ」
村田は指を折りながらそう話す。
すると汐は、少し悲しそうな顔で目を伏せた。
「どうした?」
村田が尋ねると、汐は伏し目のまま呟くように言った。
「最近、炭治郎の様子がおかしいの。本人に聞いてもはぐらかされて、気持ちの整理がつくまで待ってほしいって。でも、今までこんなことなかったし、待っていてって言われても、いつまで待てばいいか分かんないし・・・」
汐の絞り出すような声に、村田は驚いた表情を浮かべた。
「それって、本当なのか?」
「こんなことで嘘なんかつかないわよ」
汐はいつものように少しひねくれたように言うが、その声は真剣そのものだった。
村田は炭治郎が汐の事をどう思っているか知っていた。少なくとも、汐が今思っているような事ではありえない。むしろ逆だということを。
しかし村田はそれを伝えるつもりはなかった。これは、二人の問題だからと思ったからだ。