第148章 真実(前編)<壱>
一方、汐は反復動作を繰り返しながら、必死で岩を押していた。少しでも気を抜けば、岩は止まり動かなくなる。
汐は咆哮を上げながら、必死で岩を押し続けた。
だが、その集中力が切れたのか、半分ほどの距離まで来た時急激に力が抜けて行った。
(嘘ッ・・・、こんな時に・・・)
汐は焦ったが、抜けて行く力はどうにもならない。結局それから岩は動かず、汐は休まざるを得なくなった。
(あと少しだったのに・・・!)
汐は悔しそうに顔を歪ませると、岩の前に座り込んだ。鬼がいつ動き出すか分からない上に、隠しているとはいえ無惨が禰豆子を捜す術をもっていないとも限らない。
汐の心に焦りが生まれ始めた、その時だった。
前方から何かの気配がして、汐は立ち上がろうとした。だが、疲労した足は動かず、再び座り込んでしまう。
「おい、大丈夫か!?」
その声と共に足音がこちらに近づいてきて、汐は顔を上げた。
そこには、見覚えのある髪がやたら綺麗な顔の男が、心配そうに見下ろしていた。