第148章 真実(前編)<壱>
「えええええ!?汐ちゃんもできちゃったアアア!?」
「あ、あいつまで・・・!くそっ、やりがやるぜ・・・」
汐が岩を動かせたのを見て、伊之助はすぐさま自分の場所に戻ると叫びながら拳を振り上げた。
「天ぷら、天ぷら、猪突ゥ猛進!!」
伊之助は胸を叩きながら叫ぶと、岩に手を押し当てた。
伊之助の反復動作は、大好物の天ぷらを思い浮かべる事。至極単純だが、伊之助にとっては大きな力となった。
その想いが通じてか、伊之助の岩も少しずつだがその歩みを進めて行った。
(伊之助まで岩動いちゃった、最悪・・・!!後俺だけじゃん、最悪・・・!!)
善逸は木にしがみ付きながら顔を青ざめさせて震えていた。
このままでは置いてきぼりをくらう。焦りと恐怖が善逸の全身を駆け巡った、その時だった。
足元で、雀がさえずる声が聞こえた。
視線を動かせば、善逸の鎹鴉改め鎹雀のチュン太郎が、手紙を前に鳴いていた。
「え、何?手紙・・・?」
善逸は怪訝そうな顔をしたが、チュン太郎の焦り様からただならぬ雰囲気を感じ取った。
急いで手紙を広げ、その内容に目を通す。
「・・・!!」
読み終わった瞬間、善逸の顔が一瞬で真っ青になり、瞳は細かく震えた。