第148章 真実(前編)<壱>
一方その頃、炭治郎も汐と同じく反復動作のために、頭の中を整理していた。
炭治郎の反復動作は、まず大切な人を思い浮かべること。そして、煉獄の"心を燃やせ"という言葉を思い出すこと。
そして次に浮かんだのは、汐の笑顔。
「ぐあああああ!!」
炭治郎は咆哮を上げ、全身に力を込めた。すると額に炎のような痣が広がり、体中が熱くなった。
その感覚を何度も何度も繰り返しているうちに、炭治郎の前の岩はゆっくりと動き出した。
「いったアアアア!!」
その様子をこっそりと見ていた善逸は、涙を流しながら汚い高音で叫んだ。
「炭治郎、いったアアア!!バケモノオオオ」
「くそォ、負けたぜ・・・!!」
同じく見ていた伊之助は、悔しそうにそう言った。
その時だった。
「おおおおおおおお!!!」
別の場所から聞こえてきた咆哮に、二人は飛び上がって振り返った。
その声が汐の物だと認識した善逸は、恐る恐る木の陰から様子をうかがう。
すると、そこには。
「うおおおおおおお!!!」
咆哮を上げながら汐が、炭治郎同様に岩を押し動かしているところだった。