第148章 真実(前編)<壱>
「えーっと、要するに・・・。大海原は歌が上手いってことでいいんだよな?」
身振り手振りでまくし立てる伊之助の言葉を何とか理解した村田は、少し困ったような顔でそう言った。
「まあそんなところだ!だから、歌えよ」
「何がだからなのよ。あんたって時々わけわかんなくなるわね」
汐は困ったような顔をして、ため息を一つついた。
「まあ猪はともかく、そんなに歌が上手いんなら俺たちにも聞かせてくれよ。みんな訓練が上手くいかなくって苛ついてるから、景気づけにさ」
「うーん・・・。ウタカタを使うのは禁止されてるけど、景気づけくらいならいいか・・・」
汐は小さくうなずくと、二人から少し距離を取って大きく息を吸った。
開かれた口からあふれたのは、以前落ち込んでいた鉄火場を元気づける為に歌った歌。
始めは怪訝そうな顔をしていた村田は、その歌に一瞬にして心を奪われた。
暫くは二人だけだった観客が、時間が経つにつれ少しずつ増えていき、いつしか全員がその美しい歌声に耳を傾けていた。
それは、炭治郎と玄弥も同じだった。