第147章 本音<肆>
その頃炭治郎も、一向に動く気配のない岩に苦戦していた。
(今日も駄目だった・・・)
炭治郎は地面に仰向けになりながら、乱れた息を整えていた。
(鬼だって、いつまで大人しくしてるか分からないぞ。早くしないと・・・)
炭治郎の心には焦りが生まれ、顔からは嫌な汗が流れ落ちた。
(そう言えば、汐はどうしているだろう。俺、あの日から汐の事を避けている・・・)
炭治郎は汐の顔を思い浮かべ、悲し気に眉根を寄せた。
あの日村田を含めた隊士達から、自分が汐を好きだと指摘されてから汐の顔をまともに見られないようになっていた。
(汐の事は嫌いじゃない。それは確かだ。でも、俺は・・・)
炭治郎も、もやもやした気持ちを抱えながら目を閉じたその時だった。
「炭治郎?」
「えっ?」
その場にいないはずの声がして、炭治郎はすぐさま体を起こした。そこには、自分を心配そうに見つめる汐と、その隣には玄弥がいた。