第147章 本音<肆>
(駄目だ。こんな状態じゃ訓練なんてやってられない。少し気持ちを切り替えよう)
よく見れば汐の晒は汗と土で汚れており、微かに異臭を放っていた。
(げっ・・・、あたしこんな汚くなるまで訓練してたんだ・・・。とりあえず着替えよう)
汐は近くの川に手ぬぐいを浸し、晒を脱いで身体を拭くと、そのまま晒を洗った。
洗濯板がないので完全に汚れは落ちないが、汚れたまま置いておくよりはマシだろう。
汐は洗った晒を木に干すと、新しい晒を取り出し胸元に巻き付けた。
(あれ?なんだか前より晒がきつい気がする・・・。もしかして、ちょっと大きくなった?)
だとしたら少しうれしい。と、汐が顔をほころばせていると、不意に背後から気配を感じた。
「!?」
汐はすぐさま反応し、川べりの石を掴み気配がする方向に腕を振り上げた。
「曲者ォォォオオオオ!!!」
汐の声と共に石はすさまじい速さで飛んでいき、茂みの中に吸い込まれていった。