第147章 本音<肆>
それからさらに三日後の夜。
汐は今日も岩を押す訓練に明け暮れた。だが、いくら力を込めても、岩はうんともすんとも言わなかった。
汐だけじゃなく、炭治郎や善逸、伊之助も含めて、誰も岩を動かせていない。
今までやってきた事を全てつぎ込んでも全く結果が出ないことに、汐は焦りを感じていた。
(何で動かないのかしら・・・。全集中の呼吸はちゃんと四六時中続けているし、筋力ももう十分ついたはずだけど・・・)
汐は流れ出る汗を拭きながら星空を見上げた。もやもやした気持ちとは裏腹に、空は憎らしい程澄み切っていた。
(そう言えば・・・)
汐はふと、炭治郎の事を思い出した。
(三日前から炭治郎がなんだか変なのよね・・・。あたしと目を合わせようともしないし、話しかけても逃げるし・・・)
汐は何故炭治郎が自分を避けだしたのか、理由が全く思い当たらなかった。
(もしかしてあたし、炭治郎に嫌われた・・・?)
そう思った瞬間、汐の中のもやもやした気分が急に不安へと変わった。
炭治郎に嫌われるようなことをした覚えはないが、無意識のうちに傷つけていた可能性もある。
(嫌だ・・・!)
汐は体中に広がっていく不安に身体が震えた。今の汐にとって炭治郎に嫌われるということは、何よりも恐ろしいことになっていた。