第146章 本音<参>
「俺は信じないぜ。あのオッサンはきっと、自分もあんな岩 一町も動かせねぇよ。若手をいびって楽しんでんだよ」
そんな善逸を見て、汐は呆れた表情を浮かべ、炭治郎も少し困った顔をした。
「あんたねぇ。他人をひがんでいる暇があったなら、少しは自分もできるように努力しなさいよ」
汐は食べ終わった魚の串を、善逸に向けながら言った。
「それに、あの人は自分にも他人にも厳しいけど、話がわかる人よ。少なくとも、あんたが思っているような人じゃないわ」
「汐の言う通りだぞ、善逸。それに悲鳴嶼さんは俺たちが押す岩よりもまだ大きな岩を押しているそうだから・・・」
だが、二人がそう言っても善逸は曲げた臍を戻さなかった。
「汐ちゃんはともかく、炭治郎、お前は何で言われたことを、すぐ信じるの?騙されてんだよ」
「あら、ともかくってどういう意味かしら?ねぇ、どういう意味?」
善逸の言葉に汐は顔を引き攣らせ、炭治郎は首を横に振った。
「いやいや・・・。善逸も耳が良いんだから、嘘ついてるか付いてないかくらい分かるだろ?」
そう言った瞬間、皆の後方から念仏を唱える声が聞こえてきた。
善逸が視線を向ければ、そこには自分よりもはるかに大きな岩を押して歩いている悲鳴嶼の姿があった。