第145章 本音<弐>
「あ、汐・・・!」
そんな汐の姿を見つけた炭治郎が声を掛けるが、隊服を脱いだ汐の姿を見て固まった。
「あら炭治郎、おまたせ・・・」
名前を呼ばれて振り返った汐も、炭治郎を見て固まった。
隊服の上からでは分からなかったが、炭治郎の上半身にはしっかりと筋肉がついていて、胸板は傷跡があったものの、がっしりとしていた。
腕周りも汐より二回り以上も太く、とても逞しくなっていた。
その男らしい体つきに、汐は顔を真っ赤にして背を向けた。
一方、炭治郎も肌を晒した汐を直視できず、同じく顔を真っ赤にして背を向けた。心臓が物凄い速さで鼓動し、息が荒くなる。
汐は炭治郎から距離を取り、火照る身体を冷ますように水の中へと入っていった。
滝行は、汐は想像していたものよりもずっと苛酷だった。
鱗滝の下で修練を積んでいた時も滝に打たれたことはあったが、ここの滝は狭霧山の物よりもずっと高く、水圧も比ではなかった。
下手をすれば、首がぽっきりと折れてしまうような圧だった。
その中で隊士達は、必死に念仏を唱えながら耐え続けるのだ。
念仏を唱えるのは悲鳴嶼曰く、集中する為と意識がある事を伝えるためだということだ。
汐は耳が痛くなるような水音の中を、歯を食いしばりながら滝の中へ進む。
汐の隣には伊之助がいて、被り物のまま念仏を唱えていた。
あまりに集中しているせいか、汐が隣にいる事にすら気づいていない様だ。