第145章 本音<弐>
「はっ・・・!?」
炭治郎ははっと目を開け、身体を起こした。目の前には汐がすやすやと眠っており、外からは雀の鳴き声が聞こえる。
慌てて鼻を触るが、怪我などはしていなかった。
(ゆ、夢だったのか・・・)
炭治郎は冷や汗をかきつつ、ほっと胸をなでおろした。そして同時に、自分の疑問は決して汐に尋ねてはいけないということを悟った。
「あれ?炭治郎、おはよう」
すると、目を覚ました汐が寝ぼけ眼をこすりながら起き上がった。
「あ、ああ。おはよう汐」
炭治郎は汐から目を逸らしながら、ぎこちなく挨拶をした。
「俺、どうやらお前と話し込んでいるうちにここで寝ちゃってたみたいだ。夜遅くまでごめんな」
「いや、それはいいんだけど・・・。どうしたのあんた?顔色悪いし、目もなんだか変よ?」
汐が怪訝そうな顔でそういうと、炭治郎は視線を泳がせながら言った。
「さ、さっき嫌な夢を見たせいかな。でも、汐が気にする事じゃないから大丈夫だ」
炭治郎はそう言ってぎこちなく笑うが、顔からは汗が出ているし大丈夫には見えなかった。
(炭治郎がこれだけ怯えてるってことは、相当嫌な夢を見たのね・・・。流石のあたしもどんな夢かなんて聞けないわ・・・)
汐は炭治郎の事を心配して、夢の内容を聞くことをやめた。その内容が、自分が炭治郎を血に染めているものであるなどとは露知らず。