第144章 本音<壱>
「た、炭治郎!?」
汐はびっくりして飛び起き、再び頬の傷が痛んだ。
「な、なんであんたがここに・・・?」
「何ではこっちの台詞だ!お前、一体何をやってるんだ!!」
炭治郎は怒りと焦りを宿した"目"を汐に向けて言った。
「悲鳴嶼さんのお屋敷についてもお前がなかなか戻ってこなくて、心配してたら鴉から蝶屋敷に運ばれたって聞いて、悲鳴嶼さんに許可をもらってきたんだ」
「そ、そうだったの」
「不死川さんと殴り合ったって聞いたとき、血の気が引いたんだぞ!なんでそんな無茶をするんだ!!」
炭治郎は声を張り上げ、今にも汐に掴みかかりそうな雰囲気だった。
そんな炭治郎を、三人娘が必死で止めた。
「炭治郎さん、落ち着いてください!」
「ここは病室です!」
「お気持ちはわかりますけれど、汐さんも怪我をしているので・・・!」
彼女たちに口々にそう言われ、炭治郎ははっとして口を押えた。
「ご、ごめん」
炭治郎は申し訳なさそうに、三人娘たちに謝った。
「ううん、炭治郎が怒るのも最もだわ。すぐに追いつくなんて言って、結局この様だもの。今回は本当に無茶をしたわ。ごめん」
汐は布団を握りしめながら、炭治郎に頭を下げた。反省の匂いがすることから、汐の心からの言葉だということがわかる。
「汐。差し支えなければ教えてくれないか?何故、こんな無茶をしたのか」
炭治郎は備え付けの椅子に座りながら、汐の言葉を待った。汐は少し間を置いた後話し出す。
二人の雰囲気を察した三人娘たちは、音を立てずにそっと病室を後にした。