第144章 本音<壱>
「そうか。そんなことが・・・」
汐から話を聞いた炭治郎は、複雑な表情で顔を上げた。
「やっぱり汐は優しいんだな」
「え・・・」
炭治郎の言葉に、汐の頬は桃色に染まった。
「でも、だからと言って汐が無茶をしていい理由にはならないし、玄弥だってきっと心配するよ。自分の為に誰かが怪我をして喜ぶ人なんていないんだから」
「そうね。あたしも馬鹿なことしたって思ってる。だけど、どうしても我慢ができなかった」
汐はぎゅっと布団を握りしめて言った。
「不死川さんが汐と境遇が似ているから?」
「それもあるけど、なんていうか。あたしはあいつが嫌いだけど、あたしと同じ思いはしてほしくないっていうか・・・。ごめん、うまく言えないわ」
汐はため息を吐くと、痛む傷を手で押さえた。
「今日は一日安静だから、ここから動けそうにはないわ。だから、あんたはさっさと訓練に戻りなさいよ」
「その事なんだけど、実は俺も今日一日は休みをもらったんだ」
炭治郎がそういうと、汐は目を点にさせて見つめた。
「訓練に参加したのはよかったんだけれど、汐の事が気になって集中できなくて、悲鳴嶼さんに少し叱られたんだ。だから、汐が復帰するまで、今日一日はここに居るよ」
炭治郎がそういうと、汐の身体は石のように固まり、そして
「えええーーーーー!?」
顔をこれ以上ない程真っ赤にしながら、汐は叫ぶのだった。