第144章 本音<壱>
どれくらい時間が経ったのだろうか。汐はゆっくりと目を開いた。
ぼんやりとした意識の中、少しずつ天井が見えてくる。
その天井には見覚えがあったが、どうも不死川邸の物とは違うような気がする。
そんなことを考えていた時だった。
「汐さん!!」
聞き覚えのある声がして、汐は視線を動かした。するとそこには、焦った顔のなほ、きよ、すみが自分を見つめていた。
「ああよかった!気が付いたんですね!!」
「すぐにアオイさんを呼んできます!」
なほときよはそう言って駆け出し、すみは汐に近づくと心配そうな目を向けて言った。
「気分はどうですか?」
「そうねぇ。少し頭がくらくらするけれど、それ以外は・・・、いっ!!」
頬に鋭い痛みを感じて、汐は顔をしかめた。触れてみれば布が貼られており、手当てが済んでいることがわかった。
「ってあれ?あたし何で蝶屋敷にいるの?あいつの道場でやりあって、それから・・・」
汐は記憶を手繰り寄せるが、実弥の拳が振り下ろされるところからの記憶が全くない。
どうやってここまで来たのか分からず首をひねっていると、すみはおずおずと話し出した。