第144章 本音<壱>
(こいつ・・・、こいつ・・・!最後の瞬間、自分から防御を解きやがった!!)
「おい・・・、おい!!」
実弥はすぐさま汐のいた所に駆け寄ると、舞う埃を手で払った。
治まった先には、頬を腫らし口から血を流した汐が、ぐったりと身体を壁に預けていた。
実弥は汐に駆け寄ると、脈を取り生きていることを確認した。
顔をよく見れば、汐の左目からは涙が一粒零れ落ちた。
汐が吹き飛ぶ寸前、実弥は確かにはっきりと汐の声を聞いていた。
――あなたは間違えないで。お願いだから・・・
その声は、今までの汐の声とは全く違う、優しく温かなものだった。
「何なんだよ・・・、クソがァ・・・」
実弥の口から声が漏れる。だが、その声には怒りの感情は微塵もなかった。