第143章 譲れないもの<肆>
炭治郎が一撃を入れたことに、善逸は目玉を飛び出させながら驚いた。
「善逸ーーーーっ!!!」
炭治郎は地面に倒れながらも、善逸の名を叫んだ。
「玄弥を逃がしてくれ、頼む!!」
(ちょっ・・・バッ、バカお前・・・バカ!!名前呼ぶなバカ!!もっと上手いこと合図出来るだろう!!)
あまりにも短絡的すぎる合図に、善逸は心の中で文句を言いながら炭治郎を睨みつけた。
一方、炭治郎の蹴りを受けたはずの実弥は、すぐさま体勢を立て直すとそのまま逆立ちに近い体制で炭治郎を薙ぎ払った。
直撃は避けられたものの、掠っただけで炭治郎の耳から血が噴き出した。
(掠っただけで耳が切れる、蹴り!!)
顔を歪ませる炭治郎を、実弥は怒りと殺意を込めた目を向けて言った。
「いい度胸ォ、してるぜテメェはァ。死にてェようだから、お望み通りに殺してやるよォ」
そんな二人を見て、玄弥が叫んだ。
「待ってくれ兄貴、炭治郎は関係ない!」
だが、玄弥がその先を続ける前に善逸がその腕を掴んで走り出した。
その後、炭治郎と実弥の殴り合いは続き、実弥を止めようと隊士達は掴みかかった。
その騒ぎを聞きつけた汐は、その光景を見て顔を歪めた。