第142章 譲れないもの<参>
「俺もうこれ以上耐えられないよォ!毎日毎日ボコボコに殴られて吹っ飛ばされて、死んじゃうよぉ!!」
「ええいうるさいわね。そんなのやり返せばいいでしょうが!骨を折るなり、××××するなりできるでしょうに」
「できるかぁ!!あのね、そんな怖ろしい考え方ができるのは君だけだからね!!あんな化け物に啖呵を切ることができるなんて、君と伊之助ぐらいだからね!!」
善逸がそう言った瞬間、突き刺すような殺気が汐の全身を穿った。
「ほぉ・・・。だったら今選ばせてやろうか?訓練に戻るか、俺に殺されるか」
「ぎゃあああああ!!!」
背後から実弥の気配を感じた善逸は、悲鳴を上げてのたうち回った。
実弥はそれを物理的に黙らせると、汐をじろりとにらみつけた。
「おい、何をもたもたしてやがる。準備ができたならとっとと来やがれ。グズは嫌いだ」
実弥はそう言うと、気絶した善逸を引きずっていってしまった。
汐は不満そうな顔をしながらも、その後ろについていった。
「初めに言っておくが、俺は女だからって一切手加減はしねぇ。ましてやテメェは、俺を一発殴ってんだからなァ」
「ちょうどよかったわ。あたし、男女差別がこの世で五番目に嫌いなの。あんたが本気でかかってくるなら、こっちもやりがいがあるしね」
汐は満面の笑みを浮かべながら、実弥を睨みつけた。(服の下でこっそり中指を立てていたのは内緒だ)
(クソガキ)
(クソ野郎)
二人は睨みあいながら、訓練場へ続く廊下を歩いていった。