第142章 譲れないもの<参>
不死川邸に入った汐は、荷物を置くと訓練場へ向かう廊下を歩いていた。
ここに来てから肌を刺すような殺気を感じ、微かに鳥肌が立った。
(だけどあたしはこんなところでへこたれないわ。やってやるんだから)
汐は決意を胸に、訓練場へ向かおうと振り返った時だった。
「くぁwせdrftgyふじこlp!!」
突然前方から、黄色の塊が奇声を上げながらこちらに向かって飛んできた。
それを見た汐は、反射的に人差し指と中指を塊に向かって突き出した。
汐の指は、塊の両目にキレイに突き刺さった。
「ギィヤアアああああ!!」
黄色の塊は耳をつんざくような声で叫ぶと、両目を抑えてのたうち回った。
「目が・・・、目がぁあああああ!!」
よく見るとそれは、全身が痣らだけの善逸だった。
「ああびっくりした。よく見たら善逸じゃない。何かの物体かと思ったわ」
「酷いよ汐ちゃん!!俺さっきまでボコボコにされてたのに、君にまでこんな仕打ちを受けるなんて!!」
両目から涙をとめどなく流しながら、善逸は抗議の声を上げた。
「で、あんたはこんなところで何やってんのよ。今は訓練中でしょ?」
「しぃーっ!!大きな声を出さないでよ!そんなの逃げて来たに決まってるじゃないか!!殺される・・・!!」
善逸は全身をガタガタ震わせながら、汐に縋りついた。