第141章 譲れないもの<弐>
伊黒邸を出た汐は、ソラノタユウを頼りに次の柱の所へ向かっていた。
(次は・・・、オコゼ野郎のところね)
汐の表情は伊黒の時とは少し異なり、歪なものになっていた。
伊黒とも仲が良いとは決して言えないが、実弥とは犬猿の仲を遥かにり越したものだった。
炭治郎同様、汐も禰豆子を傷つけたことを未だに許していなかったからだ。
いや、きっと一生許すことはないだろう。
屋敷へ向かう度に、汐の"目"には少しずつ殺意が宿っていく。
やがて屋敷が近くなってきた頃。
「ぎゃあああああああああ!!!」
耳をつんざくような悲鳴が聞こえ、汐は肩を震わせた。
そして悲鳴から間髪入れずに、何かが打ち合う轟音が響く。
汐は嫌な予感を感じながら、そっと不死川邸の中を覗いた。
そこには、あちこちに倒れ伏す隊士達の姿があった。
皆うつ伏せに倒れ、ぴくぴくと痙攣している。
(ここは死体置?)
汐が顔をしかめていると、少し前に見知った顔を見つけた。
特徴的な髪形をした、背の高いその姿は。
「玄弥!!」
汐が呼ぶと、玄弥は驚いたように振り返った。
「おまっ、わだ・・・」
「汐って呼べって言ったわよね?」
「・・・、汐」
「よし」
玄弥の言葉を無理やり訂正させた汐は、満足そうにうなずいた。