第141章 譲れないもの<弐>
「炭治郎・・・?」
汐が思わずその名を呼ぶと、炭治郎の顔はみるみるうちに笑顔になった。
「汐っ!!」
炭治郎は叫ぶように汐の名を呼ぶと、飛ぶように傍に駆け寄ってきた。
「久しぶりだな!あれ?お前少し瘦せたんじゃないか?ちゃんと食べて寝てるか?訓練は辛くないか?」
「ちょっ、待ってって!そんなに一気に聞かれても答えられないわよ!!とにかく落ち着きなさいって」
汐は捲し立てる炭治郎を落ち着かせようと、必死でなだめた。
「あ、ごめん。久しぶりにお前に会えたから嬉しくて、つい・・・」
「別にしょぼくれる必要はないわよ。あたしだってあんたに会えて嬉しいんだから」
汐がそう言うと、炭治郎は驚いたように顔を上げた。
「あっ、べ、別にあんたに会えなくて寂しかったとか、そんなんじゃないんだからねっ!!」
汐は顔を真っ赤にしてそっぽを向くが、匂いは嬉しさに満ち溢れていた。
「そんなことより、あたしあいつにここの掃除を命令されてるの」
「あいつって、伊黒さんか?」
「そうよ!訓練が終わって合格かと思ったのに、いきなり掃除をしろって言うのよ!相も変わらず訳が分からない男だわ」
汐がそう言って顔をしかめていると、
「どの口が言うか」
背後から声がして、汐と炭治郎は悲鳴を上げて飛び上がった。
いつの間にか、そこには伊黒が腕を組んで立っていた。