第141章 譲れないもの<弐>
(あの野郎。あたしが片付け苦手な事知ってて、わざとこんなことを押し付けたわね!絶対に許さない!いつか絶対にぶっ飛ばしてやるわ!)
汐は伊黒への怒りを露にするが、ふとある事を思い出して動きを止めた。
(でも、あたしが炭治郎に手紙を送ることは許してくれたのよね・・・。てっきり突っぱねられると思ったのに)
その事を踏まえ、実は案外話が分かる人ではないかと思った矢先の仕打ちだった。
「ああーー、もう!!とにかくさっさと掃除しよう。まずは布団を片付けて・・・」
汐は散らばった布団を仕舞おうとして手を止めた。
(そう言えば、前に炭治郎に布団を綺麗に畳む方法を教わったわね)
汐は記憶を探りながら、まずは窓を開けると布団を一枚一枚丁寧に畳んでいった。
それを押し入れに押し込む、のではなくしっかりと仕舞、次は畳を箒で掃きだした。
ブリキのバケツを借り、ぞうきんを濡らして窓枠を拭き、溜まった埃をはたきで払っていた。
一通りの掃除が終わり、後片付けをしていた時。
外の方から足音が聞こえてきた。
(嘘ッ!?蛇男が戻って来たの!?まだ片付け終わってないんだけど!!)
汐は慌てて埃を払う手を速めるが、足音は無情にも部屋の前で止まり、そして襖が開かれた。
「ご、ごめん!!まだ終わってないの!!」
汐は慌ててそう言うが、目の前の人物を見て固まった。
そこには
「汐・・・?」
覚えのありすぎる緑色の市松模様の羽織を纏った、見覚えのありすぎる顔がそこにあった。