第140章 譲れないもの<壱>
そこには、天井、壁、床いたるところに縛られ、猿轡を噛まされた隊士達が所せましと並べられていた、
皆顔は青ざめ、涙を流している。
「何コレ。あんたの趣味?」
汐が顔を引き攣らせたまま尋ねると、伊黒は小さく鼻を鳴らしていった。
「大海原汐。お前にはこの障害物を避けつつ、太刀を振るってもらう」
汐はあたりを見回すと、小さくため息をついていった。
「あんまり人の趣味にケチをつける気はないけれど、こいつらがいったい何をやらかしたって言うの?」
「そうだな・・・」
伊黒は少し考える動作をした後、目を鋭くさせていった。
「あえて言うなら、弱い罪、覚えない罪、手間を取らせる罪、イラつかせる罪・・・と言った所だ」
「・・・・」
伊黒の答えに汐は言葉を失ったが、
「うげぇーッ」
途端に塵を見るような目で伊黒を見つめた。
「あんたって元々変なところがあると思ってたけれど、流石に理不尽にも程があるんじゃない?」
「黙れ。お前にあれこれ言われる筋合いはない。ここに加わりたくなければ、精々励むことだ」
伊黒はぴしゃりと汐の言葉を跳ねのけ、汐は顔を歪ませたまま障害物を見た。