第139章 千里の道も一歩から<肆>
「・・・はいかいいえかで言うなら、きっと答えはいいえ、だと思う」
汐は自分の気持ちを口にした。
「あたしは炭治郎が好き。この気持ちは嘘じゃない。炭治郎がいたから、あたしはここまで来られた。あたしにとって、炭治郎は光そのものなの。でも、あたしの想いが炭治郎の負担になるんじゃないかって思うと、怖くて」
「負担?」
「うん。炭治郎は優しい、優しすぎるから、自分よりも誰かの幸せを願う人。でもそうなると、自分の事は二の次になって傷ついてしまう。あたしは、炭治郎があたしのせいで傷つくのは見たくないのよ。だから、この戦いが終わるまで、あたしは想いを伝えない」
汐は迷いのない表情で蜜璃を見た。絶対に揺るがない意思を感じ、蜜璃は言葉を飲み込んだ。
(しおちゃんの言いたいことはわかるわ。自分のせいで大切な人が傷つくなんて、絶対に嫌だもの。でも、でも・・・。本当にそれでいいの・・・?だってこのままじゃ、炭治郎君は・・・)
「それより、みっちゃんこそ想いを伝えなくていいの?」
「え?誰に?」
「またまた、とぼけちゃって。あいつよあいつ。いやらし斬撃してくるあいつよ!」
いやらし斬撃、の言葉である人物を思い出したのか、蜜璃の顔が真っ赤に染まった。
「そ、そんなことっ!!できるわけないわ!伊黒さんに想いを伝えるなんてそんな・・・」
「あれぇ~?あたし伊黒さんなんて一言も言ってないけれど、やっぱりそうなんだぁ~!!」
「あ、ああー!!しおちゃんたら!!からかったわねぇーーー!!」
蜜璃は顔を別の意味で真っ赤にさせて、頭から湯気を吹き出した。