第139章 千里の道も一歩から<肆>
(うぅ・・・、油断したわ・・・)
一日経った後、厠を出た汐は青い顔をしながら訓練場へ向かっていた。まだ口の中に蜂蜜の甘さが残っているようで気分が優れない。
(あのかりんとうはたまたま美味しかっただけで、蜂蜜自体が大丈夫になっただけじゃなかったのね・・・。もう絶対に甘いものは口にしないわ)
汐はそう誓いながら、訓練場の中を覗き目を見開いた。
そこには蜜璃以外誰も折らず、閑散とした雰囲気が漂っていた。
「あれ?ここに居た他の人達は?」
汐が尋ねると、蜜璃は微笑みながら言った。
「みんな次の柱、伊黒さんの所へ行ったわよ。しおちゃんのお手本を見てやる気出してくれたのか、動きがすごくよくなっていたの!だから全員合格にしちゃった」
てへへと笑う蜜璃に、汐は嬉しいような恥ずかしいようなこそばゆさを感じた。
「ところで、身体の調子はどう?まだ気分悪い?」
「ううん、もう大丈夫よ。みっちゃんにはまた迷惑をかけたわね。ごめんね」
「そんなことないわ!しおちゃんが苦手なことを克服しようと頑張っていたんだもの。迷惑だなんて思わないわ!」
蜜璃は両手を握りしめながら力強く言った。