第139章 千里の道も一歩から<肆>
「それじゃあ早速始めましょう。準備運動が済んだら、身体を解して、その後は音楽に合わせて私と踊ってみましょう」
稽古が始まると同時に、訓練場に悶絶する隊士達の絶叫が響き渡った。
何しろ、蜜璃の怪力による力技による柔軟のため、激痛で悶絶する者が後を絶たないのだ。
そんな中、ただ一人だけ声を上げない者がいた。汐だ。
唯一の経験者だった汐は、既にその訓練に慣れていたためだった。
しかし汐はその時は知らなかった。
汐が来る前にいた善逸は、痛がるどころかこれ以上ない程の幸せな笑顔で柔軟訓練を受け入れていたことを。
「はい。これでみんなの柔軟訓練は終わり。次は音楽に合わせて踊ってみましょう」
蜜璃はそう言って周りを見渡すと、汐と視線がぶつかった。
「じゃあまずはお手本から。しおちゃん、踊ってみて」
「えっ、あたしがやるの!?」
「大丈夫大丈夫。しおちゃんならできるわ!頑張って」
もはや完全に丸め込まれている汐だが、師範の指示を断ることもできずに渋々受け入れた。
隊士達が見つめる中、訓練場に音楽がかかる。汐はいつもの訓練と同じように余計な力は抜いて、旋律に身を任せた。