第139章 千里の道も一歩から<肆>
「はーい!注目!!」
汐の後から入って来た蜜璃は、手を叩いてそう言った。すると、視線は汐から蜜璃に移り、雰囲気が一変した。
(うわっ、男共の"目"から邪な感情を感じるわ。流石助平男量産体質・・・)
顔をしかめる汐に気づかないのか、蜜璃はそのまま続けた。
「みんなにはここで身体を柔らかくする訓練をします。一見地味に見えるかもしれないけれど、柔軟はとっても重要なの。怪我の防止は勿論、皆動きも滑らかなものになるから。だから、一緒にがんばりましょうね」
蜜璃が笑顔でそう言うと、周りの隊士達から一斉に歓声が上がった。
(皆善逸を同じ顔をしてるわ。男って本当に、単純なんだから)
汐がそんなことを思っていると、ふと脳裏に炭治郎の顔が浮かんだ。
(ま、まさか。炭治郎がここに来たらこんな風になるんじゃ・・・。ううん、それはないわね。あいつ、腹が立つほど鈍感だから)
汐は腹が立つような安心したような、奇妙な感情を感じていた。