第139章 千里の道も一歩から<肆>
「や、やだ!ごめんなさい!私ったら、しおちゃんが復帰したって聞いてうれしくてうれしくて・・・」
「快気祝いをしてくれるのはうれしいけれど、あんた一応柱なんだから私情を挟むのはどうかとおもうわ」
汐が呆れながら言うと、蜜璃は頬を赤くしながら言葉を詰まらせた。
「でもまあ、みっちゃんが元気そうでよかった。今日から多分、しばらくお世話になるからよろしくね」
汐がそう言うと、落ち込んでいた蜜璃の顔が瞬時に明るくなった。
荷物を置いて訓練場へ行けば、既に何人かの隊士が稽古を受ける為に来ていた。
しかし、彼等の身に纏うものを見て汐は顔を引き攣らせた。
それは、汐が稽古の時に来ている【レオタード】という西洋式の運動着だった。
(あれって体の形がはっきり見えるから、着るとき恥
しいんだけど・・・。男でも着られるものなのね、あれって)
汐はこの時点ですでに疲労感を感じていたが、それを振り払うようにして自分も着替えた。
着替えた汐が稽古場へ入ると、一斉に視線を感じた。おそらく汐を男だと思っていた者たちが、体つきを見て驚いたからだろう。
同じことの繰り返しに、流石の汐も慣れきっていた。