第139章 千里の道も一歩から<肆>
無一郎邸を後にした汐は、次の柱の屋敷へ向かっていた。
(確か次の柱は、みっちゃんだったわね)
蜜璃とは見舞い以来顔を合わせていなかったため、久しぶりに会う師匠に汐の心は踊った。
宇髄や無一郎はともかく、一番親密な付き合いをしている柱だからだ。
(でも、いくら自分の継子でも、柱稽古では贔屓なんてしないで対等に扱うんだろうな)
それはそれで少し寂しいと思ったが、蜜璃はあれでも鬼殺隊最高位の柱。私情と世情を切り替えるだろう。
だが汐のその考えは、屋敷についたとたんに木っ端みじんに吹き飛んだ。
「しおちゃああああん!!会いたかったわーーー!!」
汐が門をくぐるなり、緑と桃色の塊が転がるようにして突進してきた。
汐が避ける間もなく、蜜璃は汐を思いきり抱き締めた。
「怪我はもう平気!?稽古はきつかった!?お腹は空いていない!?喉は乾いていない!?」
蜜璃は汐を抱きしめたまま、機関銃のような速さでまくし立てた。
「と、とりあえずみっちゃん・・・。腕を緩めてくれない?あんたの凶悪な物で窒息死しそうなんだけど・・・」
汐がうめき声をあげると、蜜璃は慌てて汐を離した。