第139章 千里の道も一歩から<肆>
汐が無一郎邸を出てから数時間後。宇髄から許可をもらった炭治郎がやってきた。
「いらっしゃい、炭治郎!来てくれたんだね!!」
炭治郎の顔を見るなり、無一郎は満面の笑みで出迎えた。
「こんにちは、時透君。今日からよろしくね!」
それに対し、炭治郎も朗らかな笑顔で答えた。
無一郎に案内されて荷物を置きに行くと、炭治郎は微かに汐の匂いを感じた。
「あれ?汐の匂いがする・・・」
炭治郎が何気なくそう言うと、無一郎は足を止めていった。
「汐はもう次の柱の所に行っちゃったよ。ほんの数時間くらい前だった」
「え?そうなの?そっか・・・」
炭治郎はがっくりと肩を落とした。
「そんなに汐と会えなかったことが残念?」
「え、う、うん。汐とは長い付き合いだし、色々助けられたし、その、何だかいないと落ち着かなくて・・・」
そう言ってふわりと笑う炭治郎を見て、無一郎は不思議な気分になった。
「ふーん・・・。そうなんだ」
無一郎はその気持ちが何なのかは分からなかったが、少なくとも炭治郎と稽古ができるということに嬉しさを感じていた。