第138章 千里の道も一歩から<参>
それから八日後の事。
「うおりゃあああああ!!」
汐は雄たけびを上げながら、目の前の打ち込み台に竹刀を振り下ろす。するとその衝撃に耐え切れず、打ち込み台は轟音を立てて倒れた。
周りの隊士達は、青ざめた顔でその光景を凝視していた。
「あ、打ち込み台が壊れたのか。じゃあ汐はそろそろ、僕との手合わせかな」
無一郎はそう言うと、汐に竹刀を構えるように告げた。
(そう言えば、無一郎と手合わせするのは初めてだわ。上弦の鬼と戦った時に少しだけ見たけれど、動きに一切の無駄がなかった)
汐は唾を飲み込みながら、無一郎に向かって竹刀を構える。
空気が一瞬張り詰めたかと思うと、二人の身体は同時に動いていた。
部屋中には市内のぶつかる音と、二人の足音だけが響き渡る。
やはり無一郎の動きには全く無駄がない。それは彼が身体の使い方を熟知しているからだ。
筋肉の弛緩と緊張を切り替え、滑らかな動きを作り出している。
だが、汐も無駄に時間を費やしてきたわけではない。
初めは防戦一方だった汐だが、無一郎の動きに目が慣れ、やがて体が慣れてきた。
彼と同じように筋肉の動きにメリハリをつけ、体の動きを加速していった。