第137章 千里の道も一歩から<弐>
「・・・どうしてここが・・・、わかったのですか?」
珠世が尋ねると、鴉は人間の人脈を辿って珠世が買ったこの家の持ち主を特定。更に昼間のうちに愈史郎の視覚を把握していたことを明かした。
自分は訓練を受けているとはいえ、ただの鴉に過ぎない。そのためそこまで警戒されないことも。
「貴女方に危害を加えるつもりはないので、安心してほしい」
鴉は穏やかな口調でそう言うが、珠世は警戒心を解かないまま口を開いた。
「では、何の御用でしょうか」
「ふむ、不信感でいっぱいの様子。無理もない。吾輩が炭治郎や汐のように、貴女から信用を得るのは難しいですね。やはり」
鴉は少し考えこむような動作をした。
(どういった腹積もりなの。産屋敷・・・、何か騙そうとしている?)
それを見た珠世は、耀哉の意図が全く読めず困惑していた。
「・・・愈史郎は・・・?」
「愈史郎君は心配いりませんよ。ほら、走ってくる足音が聞こえる」
鴉が言い終わると同時に、上の階から凄まじい足音が響き渡った。