第18章 鬼と人と<参>
――壱ノ型 潮飛沫(しおしぶき)!!
技を出す直前に汐は鉢巻きを引き抜き、くっついた頸が再び離れる前に斬撃を放つ。コンマ数秒の戦いを制したのは
――汐の斬撃だった。
頸が離れると同時に、体の人形たちは灰になって崩れていく。汐は刀についた血を払うと、鬼に向き合った。
鬼は呆然とした表情のまま汐に視線を向けたまま消えていく。
(あたしは炭治郎みたいに優しくはないし、鬼に同情なんてしない。ただ、こいつが、《《この子が》》何故鬼にならなければならなかったのか。どうしてこんなことになってしまったのか・・・それを思うと悲しいものね)
汐はじっと消えていく鬼の頸を見つめている。すると、彼女の口がゆっくりと開き、たった一言だけ言葉が漏れた。
「お・・・じ・・・い・・・ちゃん・・・だい・・・すき・・・」
汐は思わず息をのんだ。鬼になったものは人間の記憶をほぼ持たないというが、この娘は消える寸前に思い出したのだ。大好きだった祖父、右衛門のことを。
そして彼女は一筋の涙を流しながら、灰になって消えていった。
残された部屋の中央には、何度も継ぎ接ぎされた着物を身にまとった、とても古い人形が一体だけ鎮座していた。