第137章 千里の道も一歩から<弐>
「んじゃ、とりあえずまずは一周ひとっ走りして、鈍った身体を存分に叩き起こしな!!」
「当然よ!あんたこそ、強くなったあたしを見てひっくり返ったりしないでよ!」
「言うじゃねえか。あ、一つ言っとくが、ウタカタを使うのは禁止だからな」
「わかってるわよ。じゃあ行ってくるわね」
汐はそう言うと、準備体操をした後そのまま走り出した。
元々汐は海辺育ちで、肺機能は勿論の事、動きづらい砂の上での走り込みを日課としてこなしてきた。
そして今は、蜜璃と伊黒の指導を受けている身だ。
汐の身体能力の高さは、すぐに他の者たちの目に留まることになった。
ごつごつとした険しい道を、まるで普通の道のように軽やかに掛けて行く。
その韋駄天のような姿の汐に、宇髄は舌を巻いた。
(ほぉ~。病み上がりであの動きたぁ、上弦とやりあっただけはあるな。柱の継子は伊達じゃねえってことか)
「それに引き換えてめえらは・・・」
宇髄は地面をはいつくばっている隊士達に目を向けると、竹刀を振り上げ容赦なく打ち鳴らした。
「いつまで這いつくばってんだ!!女が気張ってるのに男がそんな体たらくでどうすんだ!!男の意地一つくらい見せてみろやァ!!」
青い空に宇髄の怒鳴り声が響き渡った。